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サステナビリティ・マネジメント

トップメッセージ

ヘルスケア&メディカル投資法人
執行役員 藤瀨 裕司
ヘルスケアアセットマネジメント株式会社
代表取締役社長 石原 久稔

ヘルスケア&メディカル投資法人(以下「HCM」といいます。)及びその資産運用会社であるヘルスケアアセットマネジメント株式会社(以下「HAM」といいます。)は、医療・介護サービスの需要拡大に対応するためにヘルスケア施設の整備拡充が一層求められているという環境認識のもと、社会的ニーズの増大が見込まれる介護・医療業界と資本市場をつなぐパイプの役割を担うことを目指します。すなわち、「介護」「医療」「健康」をキーワードとするヘルスケア施設への安定的な投資・保有を通じて、ヘルスケア施設の適切な維持管理及び新たな供給を促進させることで、国民一人ひとりが安心して生き生きと生活できる社会を実現し、HCMにおける安定した収益の確保と運用資産の着実な成長を目指します。

介護・医療業界と資本市場をつなぐパイプの役割

ESGに関する基本方針

基本理念

HAMは、HCMの理念である「国民一人ひとりが安心して生き生きと生活できる社会」を実現するために、社会インフラとしてのヘルスケア施設の供給促進及びヘルスケア施設に特化したポートフォリオの構築を通じて、高齢社会への貢献と中長期的な投資主価値の最大化を目指します。

HAMは、環境負荷の低減、高齢社会における社会的課題の解消に向けた取組み及びガバナンス態勢の構築などESGに配慮した資産運用の実践がかかる理念と投資主価値の向上に重要であるとの認識に基づき、オペレーター・病院関係者、スポンサー、役職員など社内外の様々なステークホルダーと協働してまいります。

環境負荷の低減

HCMが保有する運用資産におけるエネルギー効率の改善や省エネルギーに資する設備等の導入を図り、省エネルギーとCO2排出削減に努めます。また、運用資産にかかる資本的支出や修繕計画の策定及び実施にあたり、省資源及び廃棄物の削減に努めます。

高齢社会における社会的課題の解消に向けた取組み

HAMは、HCMによるヘルスケア施設への継続的な投資と安定的な資産運用が、高齢社会における社会的課題の解消の一助になるものと考えています。そのため、投資家、オペレーター・病院関係者、スポンサー、役職員など社内外の様々なステークホルダーと協働してまいります。

① オペレーター・病院関係者との取組み
HAMは、ヘルスケア施設のオペレーター・病院関係者との対話により緊密な信頼関係を構築し、HCMが保有するヘルスケア施設の運営状況の把握に努め、利用者の安心と安全や環境に配慮した資産運用を行います。
また、ヘルスケア施設の職員や医療従事者の労働環境等に対する社会的関心の高まりを踏まえ、HCMが保有するヘルスケア施設のオペレーター・病院関係者の改善に向けた取組みをわかり易く公表し、投資家の理解を深めるように努めます。

② スポンサーとの取組み
HAMは、「医療・介護」「ファンド運営」「金融」に関わる高度な専門性を有するスポンサーと協働し、HCMの安定的な資産運用と中長期的な運用資産の拡充による高齢社会の課題解消と投資主価値の向上に取り組みます。

③ 役職員との取組み
HAMは、役職員がその能力を最大限に発揮できるよう、働きやすく健康な職場環境づくりに努めるとともに、専門的教育や研修支援等による人材育成へ積極的に取り組みます。また、本基本方針の実践のため、役職員に対しESGに関する研修等を継続的に実施し、役職員の意識向上に努めます。

④ 業務委託先その他の取引先との取組み
HAMは、業務委託先その他の取引先に対し、ESGにかかる取組みに理解と協力を求め、本基本方針に則った取組みを推進します。

⑤ 地域社会への貢献
HAMは、HCMによる資産運用を通じて、地域社会におけるヘルスケア施設の充足率の向上や地域医療構想の実現に貢献していきます。

ガバナンス態勢の構築

HAMは、自律的なコンプライアンス遵守態勢、ガバナンス態勢の構築を図るため、社内体制や社内規程等の整備に努めます。

① 自律的なコンプライアンス遵守態勢の構築
HAMは、役職員が自律的にコンプライアンスを遵守する態勢を構築するために、業務上必要とされる法令その他のルールの理解を深められるよう継続的に社内外の研修を実施します。

② ガバナンス態勢の構築
HAMは、ガバナンスを強化し、また、適切なリスク管理を徹底するために、各種会議体の設置や社内規程の制定など社内体制を整備し、意思決定の透明性の確保、利益相反の回避、各種リスクの低減等を図ります。

投資家等のステークホルダーに対する情報開示

HAMは、投資家等に対し、環境負荷低減や高齢社会における社会的課題の解消に向けた取組み及びガバナンス態勢の構築などに関する情報を積極的に開示し、投資家等のステークホルダーの理解を深めることを通じて、HCMの持続的な成長につなげていきます。

ESG推進体制(ESG Leadership)

HAMは、「ESGに関する基本方針」において、HCMが保有する物件を対象に、省エネルギー、CO2排出削減などを重要な環境課題として認識し、これらの課題に取り組むことを掲げています。また、気候変動による自然災害等が施設の入居者・利用者などに大きな影響を与えることを認識し、レジリエンスの確保に関するポリシーを合わせて定めています。

HAMは、これらの課題を全社的に捉え、具体的な目標や施策を定めるために、「サステナビリティ推進体制規程」を制定し、社内体制、情報開示などについて定め、以下の通り、サステナビリティ推進体制の確保を図っています。

  • 代表取締役社長を「サステナビリティ最高責任者(以下「最高責任者」といいます。)」、資産運用部長及び財務管理部長を「サステナビリティ執行責任者(以下「執行責任者」)と定め、「最高責任者」及び「執行責任者」にて、気候変動関連リスクを含む重要な課題に対する具体的な施策の企画・立案、実行を統括しています。
サステナビリティ
最高責任者
代表取締役社長
  • ・サステナビリティ推進に係る体制を整備し、各種ポリシー、目標及び施策の立案と実行を統括する
  • ・サステナビリティ推進項目には、HCMにおける気候変動関連リスクと機会及びHAMの人権尊重やDEI(多様性・公平性・包摂性)に係る分析、体制の整備、各種ポリシー、目標及び施策の立案と実行を含む
サステナビリティ
(パフォーマンス)
執行責任者
資産運用部長
  • ・サステナビリティ推進に係る各種施策の企画・実行を統括する
  • ・気候変動リスクと機会の分析に基づき、気候変動リスクと機会に係る各種施策の企画・実行を統括する
サステナビリティ
(マネジメント)
執行責任者
財務管理部長
  • ・サステナビリティ推進に係る体制及び規程等の整備並びに開示施策の企画・実行を統括する
  • ・人権尊重やDEI(多様性・公平性・包摂性)について現状課題の分析に基づき、人権尊重やDEIに係る体制及び規程等の整備並びに各種施策の企画・実行を統括する
  • 「EMS(環境管理システム)運用マニュアル」を策定し、上記の方針、規程、各ポリシーを運用するための詳細を規定して、PDCAサイクルに基づくEMSの構築、運用、維持に活用しています。

HAMウェブサイト / ESGに関する基本方針
http://www.hcam.co.jp/pdf/esg.pdf

また、サステナビリティに関する各種ポリシー、目標及び施策を検討し、立案する「ESG委員会」を設置しています。

体制図(2024年3月末現在)(ESG Decision Making System)

体制図

ESG委員会(ESG Committee)

委員長 常勤取締役、パフォーマンス執行責任者又はマネジメント執行責任者から最高責任者が指名した者
メンバー (1) 常勤取締役
(2) パフォーマンス執行責任者
(3) マネジメント執行責任者
(4) 資産運用部員
(5) 投資部員
(6) 財務管理部員
(7) ヘルスケア業務推進部員
(8) コンプライアンス・オフィサー
(9) その他委員長が任命した者
開催頻度 原則として毎月1回以上
  • ・本委員会は、最⾼責任者に対して、3か⽉に1回以上各種ポリシー、⽬標及び施策等について報告を⾏います。
  • ・本委員会は、取締役会に対して、年に1回以上各種ポリシー、⽬標及び施策等について報告を⾏います。

推進プロセス(PDCAサイクル)

HAMは、「EMS運用マニュアル」に基づき、気候関連問題に関わる環境負荷の継続的な低減を図るために、PDCAサイクルに基づいて保有物件の運用におけるエネルギー消費、GHG(Greenhouse Gas:温室効果ガス)排出、水消費、廃棄物に関する環境目標設定、実績把握、予実分析、対策実行・改善を行っています。

PDCA

経営陣への報告プロセス

  • ・ESG委員会は、原則として毎月1回以上、委員会を開催します。ESG委員会は、最高責任者に対して、3カ月に1回以上、取締役会に対して、年1回以上、各種ポリシー、目標及び施策等について報告を行います。
  • ・投資部は、新たに物件を取得した場合には、「ESG委員会」に対して、当該物件に係るレジリエンスの確保に関する報告を行います。

ESG委員会 開催回数

2021年度 2022年度 2023年度
ESG委員会の開催数 3回 16回 15回
マネジメントレビュー回数 1回 1回 4回
取締役会への報告回数 1回 4回 4回
ESG社内研修の実施回数/参加率 2回/100% 全役職員対象:1回/100%
ESG委員対象:2回/100%
3回/95.5%

ESG社外研修

株式会社竹中工務店

ESGに関する研修として、株式会社竹中工務店の竹中技術研究所を訪問し、建築・建設を通したESGに関する最新の研究・取組みを見学しました(2023年)。

株式会社長谷工コーポレーション

ヘルスケア業界に関する研修として、株式会社長谷工コーポレーションの吉村直子取締役執行役員(兼 株式会社長谷工総合研究所取締役主席研究員)をお招きし「高齢者住宅・施設事業の現況と今後の事業展望」についての勉強会を開催しました(2023年)。

ANAビジネスソリューション株式会社

DEI(多様性、公平性、包摂性)への理解を深め、職場のダイバーシティ推進を目的とした外部講師による研修会を開催しました(2023年)。

マテリアリティ

HCMとHAMは、ESG(環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance))に配慮した資産運⽤を実践し、投資理念の実現と中⻑期的な投資主価値の向上を⽬指します。

解決すべき課題 関連性の強いSDGs
環境
(Environment)
  • ・水資源の消費量の抑制
  • ・省エネルギーとCO2排出削減
  • ・気候変動を原因とする自然災害への対応(レジリエンス)
  • ・廃棄物の管理と削減
社会
(Social)
  • ・高齢者人口に対する高齢者向け住宅の供給不足の解消
  • ・介護施設の供給促進を通じた介護離職防止
  • ・介護職員の業務効率化・業務負担の軽減
  • ・入居者に対する虐待及び施設職員に対するハラスメントの防止態勢
  • ・病院の老朽化対応・耐震化推進
  • ・ワークライフバランス、職員等の健康
ガバナンス
(Governance)
  • ・意思決定の透明性
  • ・公正な取引(利益相反の適切な管理)
  • ・各種リスクの管理(反社会的勢力の排除を含む)
(出所) 国際連合広報センター「SDGsのポスター・ロゴ・アイコンおよびガイドライン」より抜粋

外部認証

環境パフォーマンスデータの第三者保証

2021年度・2022年度における環境パフォーマンスデータ(CO2排出量、水消費量)は、 ㈱サステナビリティ会計事務所による独立した第三者保証を受けています。

GRESBリアルエステイト評価

HCMは、2024年GRESBリアルエステイト評価において、総合スコアのグローバル順位により5段階で格付されるGRESBレーティングで「1スター」を取得し、ESG推進のための方針や組織体制などを評価する「マネジメント・コンポーネント」と保有物件での環境パフォーマンスやテナントとの取組等を評価する「パフォーマンス・コンポーネント」の双方において優れた参加者であることを示す「グリーンスター」の評価を2年連続で獲得しました。

BELS評価

BELS(建築物省エネルギー性能表示制度:Building-Housing Energy-efficiency Labeling System)は、「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」における省エネ性能の表示の努力義務に対応した、住宅・建築物を格付けする第三者認証制度です。国が定める建築物エネルギー消費性能基準に基づく一次エネルギー消費量から算出されるBEI(Building Energy Index)の値によって評価されます。
本制度に基づく評価・表示は、評価協会会員である登録住宅性能評価機関、指定確認検査機関あるいは登録建築物調査機関のうち、BELS業務を実施する機関としての届出を行った機関が実施することとされており、評価結果は5段階(星1つ~5つ)で表示されます。
HCMでは、以下の物件が評価を取得しています。

物件名称 評価 評価取得日

ノアガーデン エル・グレイス
2022年12月6日

ノアガーデン シーズンベル
2022年12月6日

CASBEE認証

「CASBEE」(建築環境総合性能評価システム)は、建築物の環境性能で評価し格付けする手法です。省エネルギーや環境負荷の少ない資機材の使用といった環境配慮はもとより、室内の快適性や景観への配慮なども含めた建物の品質を総合的に評価するシステムです。

評価結果が「Sランク(素晴らしい)」から、「Aランク(大変良い)」「B+ランク(良い)」「B-ランク(やや劣る)」「Cランク(劣る)」という5段階のランキングが与えらます。

HCMでは、CASBEE認証取得済みの物件を第19期に取得しました。(PDハウス東大阪)

TCFD提言に基づく取組み

TCFD提言への賛同及びTCFDコンソーシアムへの加入

HCM及びHAMは、2023年3月にTCFD (Task Force on Climate-related Financial Disclosures:気候関連財務情報タスクフォース)への賛同を表明し、国内の賛同企業による組織である「TCFDコンソーシアム」に加入しました。

TCFD

TCFDとは、G20の要請を受けて金融安定理事会(FSB)により、気候関連の情報開示及び金融機関の対応をどのように行うかを検討するために設立されたタスクフォースです。TCFDは企業等に対し、気候変動関連リスク及び機会に関する「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」について開示することを推奨しています。

TCFDコンソーシアム

TCFDコンソーシアムは、国内のTCFD提言へ賛同する企業や金融機関等が一体となり取組みを推進し、企業の効果的な情報開示や、開示された情報を金融機関等の適切な投資判断に繋げるための取組みについて議論する場として設立された組織です。

気候変動問題への対応と情報開示

HCM及びHAMは、投資対象であるヘルスケア施設特有の気候変動関連リスク・機会にも着目しながら、基本理念の実現と合わせて、オペレーター、病院関係者、スポンサー、役職員など社内外の様々なステークホルダーと協働して気候変動問題への対応を進め、持続可能な社会実現を目指しています。

また、気候変動関連リスク・機会への対応については、シナリオ分析に代表されるTCFD提言内容及びガイダンスを参考に情報を開示します。

シナリオ分析

世界的な気候変動や異常気象への注目、またそれらへの対策への社会的要求の高まりを受け、HAMでは気候変動問題により引き起こされる様々なリスク・機会に関して、HCM及びHAMのビジネス・戦略・財務計画に与える実際の及び潜在的影響を以下のプロセスでシナリオ分析しています。

分析対象事業は、HCMが保有している全ての不動産物件及び不動産の投資運用における事業全般としています。また今後、中期的(2030年)及び長期的(2050年)な影響の分析を目指します。

シナリオ分析のプロセス

Step.1:ヘルスケア施設の特性の把握

HCMが運用するヘルスケア施設では、入居者・利用者の身体の自由度に一定の制約がある場合もあるため、気候変動がもたらす自然災害に対しては、施設自体の安全性、避難対応などを含めて慎重にリスク・機会を検討することが重要です。

また、気候変動による各種リスクは、施設運営を行うオペレーター事業に対して大きな影響を与えるものであり、施設運営状況の良否はHCMの事業にも大きく影響します。

したがってHCM及びHAMは、投資家のみならず、入居者・利用者、オペレーターの目線を含めて、総合的な観点から気候変動によるリスク・機会を広く検討します。

Step.2:気候関連シナリオの設定

Step.1に記載した通り、HCMの事業は気候変動により大きく影響を受ける可能性があることを認識し、以下の二つの気候関連シナリオを設定しています。

移行リスクは、 気候変動に対する政策・法規制、技術開発、市場動向、市場評価等の変化によるリスクを指し、物理リスクは、気候変動がもたらす災害等による急性あるいは慢性的な被害を指します。

気候関連シナリオ
設定シナリオ 1.5℃シナリオ 4℃シナリオ
参照
シナリオ
移行
リスク
IEA(国際エネルギー機関)
NZE2050
IEA(国際エネルギー機関)
World Energy Outlook 2020 STEPS
物理
リスク
IPCC
(国連気候変動に関する政府間パネル)
第5次報告書 RCP2.6
IPCC
(国連気候変動に関する政府間パネル)
第5次報告書 RCP8.5
シナリオ概要
  • 脱炭素社会、持続可能な社会の実現に向けた政策や規制、技術革新が実施され、今世紀末までの平均気温上昇を1.5℃未満に抑えられるシナリオ。
  • 移行リスクは高いが、物理リスクは4°Cシナリオと比較すると低い。
  • パリ協定に則した国別目標などが各国の政策により達成されるも、今世紀末までの平均気温が4℃程度上昇するシナリオ。
  • 移行リスクは低いが、物理リスクは1.5℃シナリオと比較すると高い。

Step.3:事業への影響要因の設定

Step.1の施設特性を考慮しつつ、Step.2の各シナリオにてHCMの事業に影響を与える重要な要因を設定し、以下のシナリオ世界観を整理しました。

シナリオ世界観
シナリオ世界観
設定シナリオ 1.5℃シナリオ 4℃シナリオ
移行リスク
及び機会
政策

法規制
  • 省エネ基準の強化
  • 自然災害防止目的の法改正、開発規制の強化
  • 炭素税の導入強化
  • 現行方針程度の炭素税の導入
  • 省エネ設備投資への公的補助制度の拡充
  • 省エネ設備投資への公的補助制度は現行と同程度
技術
開発
  • 省エネ、再エネ技術の高度化
  • 省エネ、再エネ技術の高度化は進展せず
市場
動向
  • 投資家、金融機関は環境規制への取組み、環境性能、認証取得を評価
  • 投資家、金融機関は自然災害などの物理リスクを注視し、レジリエンス強化への取組を評価
市場
評判
  • 環境規制、環境志向によるテナント、入居者の行動変容
  • 防災志向によるテナント、入居者の行動変容
物理リスク
及び機会
急性
  • 風水害が一定程度増加
  • 風水害が甚大化
慢性
  • 平均気温が1.5℃程度上昇、海面が0.2~0.5m上昇
  • 平均気温が4℃程度上昇、海面が0.4~0.8m上昇

Step.4:ビジネス・戦略・財務計画に及ぼす影響の評価

Step.3で設定したシナリオ世界観の下でHAMの事業に影響する気候変動リスク・機会を以下の通り評価しました。なお、評価結果の大・中・小は、それぞれの影響度をHAMが定性的に判断したものです。今後、各影響度を定量的に評価することを目指します。

1.5℃シナリオのリスク及び機会
1.5℃シナリオ
リスク分類 中分類 要因(世界観) 区分 財務的影響 評価結果
移行
リスク
及び
機会
政策

法規制
省エネ基準の強化
(環境性能基準強化、再エネ利用、GHG排出量報告の義務化、ZEB/ZEH対応の義務化など)
リスク 基準達成のための開発コスト、利回り水準への影響
  • 基準強化による開発コストの増加、利回り水準の低下
  • 投資家の理解が得られる場合、物件取得、保有件数に与える影響は限定的
リスク 保有物件の環境性能の相対的な低下
  • 環境性能の低い物件の流動性および市場価値の低下
機会 環境投資への補助金等の公的補助制度の拡充
  • 補助金等を利用し、環境性能を向上させることにより省エネ基準強化対応コストを抑えながら、市場価値を向上
炭素税の導入および導入に伴うGHG排出量の規制強化 リスク 法規制対応(炭素税、非化石証書取得費用など)に伴うコストへの影響
  • オーナー負担コストの増大
  • オペレーター負担コストの増大による退去、および賃料収入の減少リスク
技術
開発
省エネ技術、再エネ技術の高度化
(技術革新による導入コストの低下、効率の向上)
リスク 新技術の導入に伴うコストへの影響
  • 技術革新により導入コストは低下しているため、投資負担の増加は限定的
機会 省エネ性能向上による水光熱費の削減
  • オペレーターの水光熱費は削減されグリーンリースによる賃料増加の可能性
市場
動向
評価基準の変化
(投資家、金融機関は運用物件の環境パフォーマンス、認証取得などを注視)
リスク 投資家、金融機関による環境パフォーマンス、環境認証の低評価
  • 環境投資、認証取得、ポートフォリオ評価向上を行わない場合、資金調達コストの増加、融資条件の厳格化、投資口価格の低下
機会 投資家、金融機関による環境パフォーマンス、環境認証の高評価
  • 環境投資、認証取得、ポートフォリオ評価向上による資金調達コストの低下、投資口価格の上昇
市場
評判
入居者/テナントの行動変容
(規制対応や志向の変化等から物件の環境パフォーマンスが重視される)
リスク 入居者、テナントによる物件の環境パフォーマンスの低評価
  • 物件の流動性および市場価値の低下、オペレーターの退去による賃料収入の減少リスク
機会 入居者、テナントによる物件の環境パフォーマンスの高評価
  • 物件の環境パフォーマンスの向上による入居率の向上、保有物件の競争力の向上による事業の安定化
急性 風水害の増加
(気候変動により風水害は一定程度増加するが甚大化しない)
リスク 災害からの復旧対応
  • 災害復旧のコストは限定的
リスク 復旧期間の長期化
  • 施設の被害は軽微であり不稼働期間は限定的
物理
リスク
及び
機会
慢性 気温上昇/海面上昇
(平均気温が1.5℃程度上昇し、海面が0.2~0.5m上昇)
リスク 気温の上昇に伴う一定程度の空調設備の稼働増加
  • 設備稼働は一定程度増加するものの、設備更新までは不要であり、水光熱費の増加も限定的
リスク 海面上昇により所有物件がハザード区域に該当
  • 既存ハザードマップなどで想定される程度の海面上昇であり、所有物件への影響は極少
4℃シナリオのリスク及び機会
4℃シナリオ
リスク分類 中分類 要因(世界観) 区分 財務的影響 評価結果
移行
リスク
及び
機会
政策

法規制
自然災害防止目的の規制強化
(ハザード区域の拡大、開発規制の強化)
リスク 既存保有物件がハザード区域に該当
  • 保有物件の流動性、市場価値の低下、テナント契約期間の短縮化、移転の増加による賃料収入の減少リスク
リスク 物件取得基準、出店基準の見直しによる物件取得価格への影響
  • レジリエンス性を担保した物件取得価格の上昇によるポートフォリオ利回りの低下
市場
動向
評価基準の変化
(投資家、金融機関は運用物件のレジリエンス性を重視)
リスク 投資家、金融機関による物件のレジリエンス性の低評価
  • レジリエンス性強化を行わない場合、資金調達コストの増加、融資条件の厳格化、投資口価格の低下
機会 投資家、金融機関による物件のレジリエンス性の高評価
  • レジリエンス性強化のための投資コストの増加はあるが一定の資金調達コストの低下
市場
評判
入居者・テナントの行動変容
(自然災害の増加から物件の防災面が重視される)
リスク 入居者、テナントによる物件のレジリエンス性の低評価
  • レジリエンス性の低い物件の流動性、市場価値の低下、オペレーターの退去による賃料収入の減少リスク
機会 入居者、テナントによる物件のレジリエンス性の高評価
  • レジリエンス性向上ニーズの高まりによる入居率の向上、保有物件の競争力の向上による事業の拡大可能性
物理
リスク
及び
機会
急性 風水害の激甚化
(風水害の激甚化により物件が損害を被る頻度が上昇)
リスク 被災による入居者、オペレーターの人的被害の発生
  • 人的被害補償、評判下落による施設競争力の大幅な低下
リスク 災害からの復旧対応
  • 災害復旧コスト、レジリエンス強化コストの増大
リスク 復旧期間の長期化
  • 不稼働期間が長く、賃料収入が減少
  • オペレーター財務状況の悪化、退去による賃料収入の減少
慢性 気温上昇/海面上昇
(平均気温が4℃程度上昇、海面が0.4~0.8m上昇)
リスク 気温上昇に伴う空調設備の大幅な稼働増加、更新頻度の増加
  • 空調設備の大幅な稼働増加等による水光熱費増加がオペレーターの経営を圧迫し、退去、および賃料収入の減少リスクが増加
  • 設備更新によるコストの増大
リスク 海面上昇により所有物件がハザード区域に該当
  • 想定外の海面上昇により所有物件がハザード区域に該当し、市場価値が低下
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